1. Top
  2. ブログ一覧
  3. BPMN(Business Process Model and Notation)と要件定義の関係性

デジタルトランスフォーメーション

BPMN(Business Process Model and Notation)と要件定義の関係性

公開日

2024.11.13

BPMN(Business Process Model and Notation)と要件定義の関係性のサムネイル

BPMN(Business Process Model and Notation)と要件定義の関係性

デジタルトランスフォーメーションが加速する現代では、ビジネスプロセスの最適化と効率的な要件定義が企業競争力を左右します。こうした背景の中、BPMN(Business Process Model and Notation)は、ビジネスプロセスを視覚的かつ直感的に表現する手法として注目されています。本記事では、BPMNと要件定義の関係性に焦点を当て、特に「as-is」と「to-be」の業務分析におけるBPMNの活用方法や具体的な事例を取り上げながら、企業がどのようにしてBPMNを用いて業務改善を実現できるかを詳述します。

BPMN(Business Process Model and Notation)とは

BPMNは、業務プロセスの流れをフローチャートとして可視化し、ビジネスユーザー、エンジニア、経営陣など関係者全員がプロセスを理解できるようにする国際標準のモデリング手法です。特に、業務の中での情報の流れや処理の分岐、担当者の役割などを明確に表現できるため、複雑なプロセスも一目で把握しやすくなります。BPMNの特徴は次の通りです。

  • 視覚的な表現力:フローチャートの形式で業務プロセスを表現し、プロセスの分岐、データフロー、各担当者の役割を明確に示します。
  • 標準化された記法:OMG(Object Management Group)により策定されており、多くのツールで利用可能です。
  • 幅広い適用範囲:単純な業務プロセスから複雑なビジネスシナリオまで対応でき、要件定義から開発、運用に至るまでの全フェーズで活用可能です。

このようにBPMNは、ビジネスプロセスを直感的かつ統一された形式で表現し、要件定義における認識のズレを解消するための有効な手段となります。また、BPMNはアジャイル(Agile)開発においても、迅速なプロトタイピングやフィードバックの反映に貢献するツールです。

BPMNを活用したas-is、to-be分析

BPMNは、現行業務の可視化と改善に役立つ「as-is」と「to-be」分析において、非常に効果的な手段です。以下に、各分析におけるBPMNの活用方法と具体例を示します。

as-is分析におけるBPMNの利用

「as-is」分析は、現行の業務プロセスを詳細に把握し、現状の問題点やボトルネックを明らかにすることを目的としています。BPMNを用いると、プロセス内での情報の流れや分岐、処理の担当者を具体的に可視化できるため、プロセス改善に向けた理解が深まります。

to-be分析におけるBPMNの利用

「to-be」分析では、理想的な業務プロセスの設計を通じて、ビジネスの目標達成に向けたプロセス改善を目指します。BPMNにより、改善後の業務プロセスをビジュアルで具体的に設計し、関係者全員に共有することで、新しいプロセスのイメージを共有しやすくなります。

BPMNの活用事例

事例1:Bank11におけるローンプロセスの最適化

ドイツのBank11は、BPMNを活用してローン審査プロセスを最適化しました。Bank11は、従来の審査プロセスにおいて多くの手作業が発生し、プロセス全体が複雑化していました。BPMNを使用したas-isプロセスの可視化により、プロセスのボトルネックが明らかとなり、自動化が可能な箇所が特定されました。

  • ルールエンジンを活用した自動化:一定の基準を満たした申請に関しては、BPMNで定義したルールエンジンにより自動で審査を実行。これにより、全体の審査スピードが向上しました。
  • 手作業の削減:デジタル化を推進し、申請書類の受理から審査までのデータ入力における手作業が大幅に削減されました。

このように、Bank11では、BPMNを用いたas-isとto-beの分析によって、プロセスの効率化とエラー削減を実現し、全体のプロセスをスムーズに進行できる環境を整えました。

事例2:Veoliaにおけるインフラ管理プロセスの効率化

インフラ企業のVeoliaは、BPMNを利用して複雑な業務プロセスを簡素化しました。Veoliaでは、都市水管理やエネルギー供給といった多岐にわたるサービスを提供しており、各部署間での情報共有が課題となっていました。BPMNによってプロセスを視覚化し、業務フローの共通理解を促進することで、以下のような改善が実現されました。

  • 部門間のコミュニケーション向上:BPMNのビジュアル表現により、各部門がプロセスを一目で理解できるようになり、情報共有がスムーズになりました。
  • 迅速なトラブル対応:問題が発生した際に迅速に関係部署と連携できる体制が整い、顧客対応の迅速化が実現しました。
  • データ収集と分析の効率化:業務フローに基づいて収集したデータを分析し、改善点を特定しやすくなりました。

これらの事例から、BPMNは業務プロセスの可視化を通じて、複雑な業務フローの課題解決に貢献していることがわかります。

BPMNと要件定義の関係性

要件定義におけるBPMNの役割は、関係者全員がプロセスを共通の視点で理解するための「橋渡し」として非常に重要です。BPMNの導入により、要件定義プロセスが次のように改善されます。

  1. 視覚的な合意形成の促進:フローチャートを用いたBPMNによって、ビジネス要件と技術要件の共通理解が図られ、関係者間の合意形成が容易になります。
  2. アジャイル開発との適合:短期間での開発と改善を繰り返すアジャイル開発では、BPMNの柔軟な視覚表現が迅速なプロトタイピングやフィードバックの反映を助けます。
  3. プロトタイピングによる早期検証:to-beプロセスのプロトタイプをBPMNで迅速に作成し、フィードバックを収集して最適化することが可能になります。特に、複数の部門や利害関係者が関わる場合、可視化されたプロトタイプは意思決定の迅速化を支援します。

まとめ

BPMNは、業務プロセスの視覚化と改善における強力なツールであり、企業の要件定義においても重要な役割を担っています。BPMNの活用により、as-isとto-be分析が効率化され、ビジネスの現状課題と将来ビジョンを明確に共有できるため、エンタープライズ企業が業務改善やデジタル変革に向けて効率的に取り組むことが可能になります。また、BPMNはアジャイル開発と相性が良く、迅速なプロトタイピングと改善を繰り返すことで、企業の競争力向上に寄与します。エンジニアやビジネスユーザーがBPMNを活用することで、柔軟かつ効率的な要件定義とプロセス最適化が実現できるでしょう。

参考文献

著者:チャン ミンウ / Minwoo Jang
#要件管理