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デジタルトランスフォーメーション

システム要求仕様とソフトウェア要件仕様の違い

公開日

2024.11.11

システム要求仕様とソフトウェア要件仕様の違いのサムネイル

システム要求仕様(System Requirements Specification)とソフトウェア要件仕様(Software Requirements Specification)は、システム開発において重要な役割を果たす仕様書ですが、それぞれの適用範囲や詳細項目には違いがあります。以下の表に、両者の主な違いを示します。

項目システム要求仕様(System Requirements Specification)ソフトウェア要件仕様(Software Requirements Specification)
適用範囲システム全体を網羅し、ハードウェアやネットワークも含むソフトウェアに特化した要件のみを定義
目的システムの全体像を明確化し、他システムやインフラとの統合性を確保ソフトウェアの具体的な動作や機能を明確化し、設計指針を提供
主な関心分野ハードウェア構成、ネットワーク、外部システムとの連携機能要件、非機能要件、インターフェース、パフォーマンス
ドキュメント利用者開発全体のエンジニア、インフラ担当者ソフトウェア開発者、設計者、テスター
プロジェクトの適用例大規模システムの開発、インフラ構築を含むシステム設計ソフトウェア単体の設計や小規模システムの開発

主な構成要素とその詳細

システム要求仕様(System Requirements Specification)とソフトウェア要件仕様(Software Requirements Specification)には、それぞれ固有の構成要素があり、プロジェクト全体の成功に寄与します。以下に、各仕様書の代表的な構成要素とその役割の違いを示します。

構成要素システム要求仕様(System Requirements Specification)ソフトウェア要件仕様(Software Requirements Specification)
機能要件システム全体の主要な機能を定義し、システムが達成すべき動作やフローを高いレベルで概観します。ハードウェアや外部システムと連携する機能も含まれ、システム全体の役割や利用方法がここに記載されます。ソフトウェアが提供する具体的な機能を詳細に定義し、ユーザーインターフェースの操作フローやデータの入力・出力仕様まで明記します。例えば、ユーザーがどのように情報を入力し、どのような処理が行われるかといった詳細が含まれ、開発の基盤となる重要な項目です。
非機能要件システム全体のパフォーマンス、信頼性、セキュリティ、スケーラビリティに関する要件を網羅的に記載します。特に、インフラやハードウェアの冗長性やバックアップ計画、災害復旧など、システムの安定運用を支える要素も含まれます。ソフトウェアに求められる具体的なパフォーマンス基準やセキュリティ要件、ユーザー体験に関する項目を中心に設定します。例えば、応答時間や処理速度、データ保護の基準が含まれ、ユーザーが期待する品質を保証するための要件が記載されます。
インターフェース要件システム間の通信プロトコルやデータ交換の仕様、他の外部システムとの連携方法を定義します。ネットワークやインフラとの接続手順も含まれ、システム全体の連携性と互換性がここで確保されます。ソフトウェア内でのモジュール間のデータや処理の連携に加え、外部APIやユーザーインターフェースの具体的な操作手順やデザインガイドラインが記載され、システム内部での一貫性を重視した項目が盛り込まれます。
性能要件システム全体が達成すべき性能基準を定義し、例えば、応答速度、スループット、システム可用性や障害回復時間など、ユーザーの要求に応じたパフォーマンスレベルが設定されます。ハードウェアやネットワークの性能に依存する基準も含まれます。ソフトウェアの応答速度や処理速度など、システムのパフォーマンスを具体的に保証するための基準が定義されます。データの処理時間やアプリケーション内での操作応答の迅速さなど、ソフトウェアの使用感に直接影響する要件が含まれます。

プロジェクト成功に向けた要件仕様の選定と管理方法

プロジェクトの成功には、システム要求仕様(System Requirements Specification)とソフトウェア要件仕様(Software Requirements Specification)の適切な選定と管理が不可欠です。これにより、プロジェクトの方向性を明確にし、最終的な成果物の品質と整合性を確保できます。プロジェクトの初期段階で、プロジェクトマネージャーはシステムアーキテクトやビジネスアナリストと協力し、プロジェクトの規模や目的に応じて、システム要求仕様やソフトウェア要件仕様のどちらが必要か、または併用するかを決定します。例えば、単体のソフトウェア製品を開発する場合は、ソフトウェア要件仕様が中心となり、ソフトウェアに求められる機能や非機能要件が詳細に記載されることが一般的です。しかし、ハードウェアやネットワークインフラが複数連携する大規模プロジェクトでは、システム要求仕様も作成し、全体の整合性を保つことが必要です。

要件仕様の作成はプロジェクト開始直後に行われ、プロジェクトマネージャーの指揮のもと、システムアーキテクトやビジネスアナリストが協力して要件を明確に定義していきます。システム要求仕様の作成では、特にシステム全体の設計に関する視点が重視され、外部システムとの連携やネットワーク構成などインフラに関わる要件も含まれるため、関係するチーム間での綿密な調整が求められます。一方、ソフトウェア要件仕様の作成は、ソフトウェア開発チームが中心となり、具体的な機能やユーザーインターフェースの要件、セキュリティに関する非機能要件が詳細に記述されます。

要件仕様の管理では、開発プロセスの進行に合わせて定期的なレビューを行い、必要に応じて更新します。レビューはプロジェクトの進捗状況に合わせて実施され、プロジェクトマネージャーが全体の管理を担い、関係者が要件の妥当性を確認します。システム要求仕様は、主にシステムの大幅な変更が発生した場合に更新され、システムアーキテクトとインフラ担当者が責 任を持って対応します。一方で、ソフトウェア要件仕様は、機能追加や変更が生じるたびにソフトウェア開発チームが更新を担当し、開発の進捗とともに最新の要件が反映されるよう管理されます。

さらに、プロジェクトが進行する中で要件の変更が生じた場合には、変更管理プロセスが適切に機能することが求められます。変更管理はプロジェクトマネージャーが中心となり、要件の変更がプロジェクト全体に及ぼす影響を評価し、関係者間での合意を得た上で正式に反映します。システム要求仕様に関する変更は特にシステム全体の調整を伴うため、他のシステムやインフラに与える影響も考慮されます。ソフトウェア要件仕様の変更は、開発段階に応じてスムーズに行われるよう管理され、チーム内で共有されることで実装が円滑に進むよう工夫されています。

このように、システム要求仕様とソフトウェア要件仕様の適切な選定と管理を通じて、プロジェクトの方向性を一貫させ、最終的な成果物の品質が保証されることがプロジェクト成功の鍵となります。

まとめ

要件定義において、システム要求仕様(System Requirements Specification)とソフトウェア要件仕様(Software Requirements Specification)を正しく理解し、プロジェクトの規模や目的に応じて適切に使い分けることが、プロジェクトの成功に寄与します。各仕様書の役割と適用方法を再確認し、プロジェクト管理において効果的な活用を促進することが重要です。プロジェクトの特性に応じて必要な仕様を適切に選定し、変更管理を徹底することで、プロジェクトは確実な方向性をもって進行し、成果物が期待通りに完成します。

参考文献

著者:松本 均 / Hitoshi Matsumoto
#要件管理